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 日本では2006年6月16日のがん対策基本法成立(2007年4月1日施行)以来、がんの登録事業が全国的により広く認識されるようになりました。がん登録については欧米で既に過去数十年単位で実施されてきていますが、それに比較すると日本では極めて遅れてのスタートです。そのような登録作業は①疾病罹患率の精度向上や②長期的な追跡調査による疾病動態把握へとつながり、それによって③疾患というそれぞれの“相手”をより深く知ることができ、同時に④それまでの治療方法への反応性を踏まえた新たな治療戦力を練ること、そして⑤最終的に医療全体の質的向上を大幅に改善させることが可能になります。しかしながら医療の対象は本来ありとあらゆる病なので、基本的にはすべての疾患を登録することによって網羅しなければなりませんし、「疾患登録」は本来医療の根底にあるべき不可欠なものであると言えましょう。
 そこで全国に先駆けて、人口の流出入が比較的少なめで安定している宮城県において「欧米並みに高度ないしそれ以上に精密で、かつ長期に渡る疾患登録事業を開始・継続すること」は疫学上・臨床上、共に極めて大きな意義があります。
 特に宮城県においては既に深く滲透している悪性リンパ腫の総合診断システム(READ system)によって当該症例全体の把握が容易になっているため、悪性リンパ腫についてはその第一の対象となり得ますし、もちろん、そのネットワークを核にすれば他の腫瘍性・非腫瘍性の血液系疾患についても同様の症例登録を実施し、その幅が広がっていくであろうことは容易に想定されます。
 さて、血液学は全身をくまなく流れている血液や多数の造血器臓器(リンパ節、骨髄、扁桃、胸腺、脾臓)、全身諸臓器に点在しているリンパ濾胞やリンパ装置が対象となる学問です。そのように対象が広範であるが故に、血液系疾患は全身すべての臓器・部位に病変が生じ得ますし、或いは逆に、全身の全ての部位・臓器で生じた傷害はそれに接している血液に「異常な検査値」という形で現れるという特殊性を有しているため、種々の病態に関する多くの情報は血液を介して知ることができます。それ故、健康診断や臨床検査において血液は最も重要な検体の一つとしても欠かすことができません。
 従いまして、血液学は医療において最も多くの他分野に深く関わっている臨床科の一つとして認識されているわけでありまして、実際、血液系疾患に携わる小児科や内科の先生方は診療で他の診療科と接する機会が多く、その相手となる診療科の数は群を抜いています。また、そのように他科と密接な関連にあることも一因となって血液学の活動自体は医療分野の中で多岐に渡っており、その多くは血液病学を専攻している内科医や小児科医、或いは輸血を必要とする外科系の医師の専門的な知識と技術によって支えられています。それらの多彩な活動はそれぞれが独立して運営できるほどの濃密な内容でありますが、一方で、ともすれば相互に希薄な関係になりかねない可能性も秘めています。それ故、それらの活動が単に個別に進められていくだけではなく、それぞれを総合的にとらえ、かつ各団体相互の連絡を密にする場を提供することによって個々の活動がより一層有機的・効率的に繰り広げられることが、強く求められることになります。宮城県においては東北大学がそれらの中心となって既に小児と成人の血液系疾患の診療体制が整い、東北大学及びその関連病院との密な連携による総合的な取り組みがより一層必要となります。
 そのように、血液系疾患の疾患登録とともにそのネットワークを生かして関連する分野の総合的なアプローチを進めるという公益性の高い事業によって当該分野における宮城県独自の特色が打ち出され、それを東北地方や全国に向けて発信することによって宮城県がそのオピニオンリーダーとなっていく方向性が現実的に強く期待されます。というのも、 その分野において公益性のある財団法人として活動している団体は全国的にほとんど例がないことも一因です。例えば、すべての財団法人[国・都道府県所管のすべて(12,321法人)]の中で保健・衛生・医療を設立目的とした1,145法人のうち「医学」を冠したものは117法人あるものの、「血液」を冠した法人はたった3つに過ぎません[総務省・公益法人データベース(2006年10月1日現在)による]。つまり、高度な公益性を持って血液学及び血液系疾患にかなり特化した活動を展開している財団法人は殆ど無く、現状としてはかなり不十分と言わざるを得ません。
 そこで、そのような状況にあって、私は血液学及び血液系疾患に関して上述の目的を図って総合的な展開を実施すべく、「血液」を冠した財団法人を設立しようとするものであります。また、付随的なことになりますが、当該分野においてそのような役割を担う医師(臨床・病理・基礎医学等)の育成を目指すことが十分功を奏せば、宮城県で血液学を学びたいという方々が集まってくることにつながっていきます。従いまして、希望的・長期的な観測になりますが、将来的には多少とも宮城県における医師の確保、即ち医師不足の環境に微力ながらも前向きな貢献をし得ることも期待できるかと思われます。
 最後になりますが、本財団は、享和・文化年間の医師である初代・一迫正安(唖科=現在の小児科)が1804年(文化初年)に宮城県北部で4代に渡る医療福祉事業(赤子救済事業)を開始してから200年余り経たことを記念し(※1)、その子孫である私が、親族一同[特に医業9代目・一迫仁也(父/故人)、ひさ(母)、10代目・一迫 浄(長兄)、一迫理恵(家内)]並びに私の医療活動を理解してくださっている多くの方々の支援を受け、私財を投じて設立するものであります。また、当方が1989年に開発した、本邦初で次世代/広域対象型の悪性リンパ腫診断システムである「READ system」の登録商標所有権を本財団法人に移すことから、友人達からの強い勧めで僭越かつ恐縮至極ながらその名称に「READ」を冠させていただく次第です。(※2)
 今後、本財団法人を基盤・核とし、血液学・血液系疾患及びその関連分野において宮城県内のみならずひいては全国へとその貢献を図りたい所存であります。
2008年10月1日  設立者:(副代表理事) 一迫 玲

(※1) ・・・・・ 日医ニュース 医界風土記 1985.11.20
(※2) ・・・・・ READ systemと財団法人設立許可までの小史 -設立者の活動記録-

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